Les Misérables: The Movie vs. TV drama vs. Book
レ・ミゼラブル-映画を最初に見た場合
名前を聞いたことはあるのだけど、2012年に公開された映画で初めてレ・ミゼラブル(Les Misérables)という作品に触れた、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
私もその一人です。小学生の頃から、「あゝ無情」というタイトルの本を児童図書で見かけた記憶はあります。しかし残念ながらその作品は読みませんでした。
後年、ヴィクトル・ユゴ―という作家が「レ・ミゼラブル」という大作を著したということは知りましたが、私の中では子供の時に見た「あゝ無情」とは結び付いていなかったですね。
レ・ミゼラブルはどんな作品?

レ・ミゼラブルは19世紀に出版されたフランスの小説です。
ヴィクトル・ユゴー(Victor Hugo)によって1862年に出版されました。
日本では1902年に黒岩涙香(くろいわるいこう)という小説家によって『噫無情』(ああむじょう)として『萬朝報』という日刊新聞に連載されたそうです。
ということは、40年の時を経たその時代に、日本の人たちに広く知られるようになったのかと思います。
レ・ミゼラブルはどの時代が設定されている?
時代設定としては1815年~1832年のようです。
1815年という年は、1804年から権力を掌握し破竹の勢いだった皇帝ナポレオン・ボナパルトがワーテルローの戦いでイギリス・オランダ・プロイセン軍に敗北ののち失脚し、王政が復古した時期でした。
この時復古した王政はブルボン朝のルイ18世政権です。
ルイ18世は、フランス革命中1793年に王妃マリーアントワネットとともに処刑されたルイ16世の弟です。
そして1830年7月には民衆による蜂起「7月革命」が起き、ブルボン朝が倒され、ブルジョワジー(中産階級の市民)が推すオルレアン朝に代わり、ルイ=フィリップが王に即位します。
ルイ=フィリップは銀行家や産業資本家の利益保護を第一に掲げ、同時に海外への進出を図ったが、国内の貧富の差の拡大、労働者・農民の不満が次第に高まり、特に普通選挙の実現を求める政治運動の高まりへと結びついていきました。
政府は選挙法改正運動を厳しく弾圧したとのことなので、要は偏った政策を変えていこうにも公平な選挙が行われないため、民衆の不満が高まって反乱を呼び起こした、と考えられます。
そして、1832年6月にパリで暴動が起こります。
この暴動はルイ=フィリップの王政を打倒しようと画策された反乱です。
彼らは「革命」を起こそうと立ち上がりますが失敗したので「暴動(6月暴動)」と呼ばれています。
この6月暴動こそがレ・ミゼラブルのストーリー中、アンジョルラスやマリウスらが起こそうとした革命です。
何も知らなくて映画を観てしまいましたが、時代背景がだいたいわかったところで映画・ドラマ・小説について考えてみます。
映画で興味を持ち、小説を読み、ドラマも楽しむ場合

映画「レ・ミゼラブル」を観ると、多くの人は感動します。
ではどこに感動しているのでしょうか?
- 憎しみに満ちたジャン・ヴァルジャンが、ミリエル司教の無償の愛にふれたことをきっかけに改心して、正しい行いをすることに命を懸けていったこと。
- そして、ジャン・ヴァルジャンはファンティーヌから遺児のコゼットを託されたことから、コゼットを実の娘のように大切に守り育てていく中、親としての愛を感じることにより、人間の幸福を取り戻していったこと。
- フォーシュルヴァン爺さん (Père Fauchelevent)は、公証人という立場であったが、自分は没落していく一方、ジャン・ヴァルジャンが成功を収めたことにより、彼を敵視していた。(このあたりの事情は映画では省略されていました)しかし、荷馬車の下敷きになっていたところをヴァルジャンに救われた。そのことが彼を、パリに逃げてきたヴァルジャンをすでに死去していた弟ユルティームとして、コゼットを姪としてプティ・ピクピュス修道院に迎え入れるという行動に向かわせたこと。
- 六月暴動の際、ジャン・ヴァルジャンはジャヴェールを処刑したように見せかけて逃がしたこと。
- ジャヴェールは、マリウスの命を救ったジャン・ヴァルジャンを逮捕することができなかった。「正しき人」となったヴァルジャンを逮捕することに疑問が生じたからである。
ジャヴェールの信念のもととなっている法は絶対のものではないということを感じるようになり、信念が崩壊したジャヴェールはその後投身自殺を遂げた。これらのことから、法に愛や献身が勝ったこと。 - エポニーヌが、暴動の中、命を落とすまでマリウスへ見返りのない愛をささげたこと。
これらのことではないでしょうか?
どの出来事についても、献身的な愛と弱きを助けるという正義が存在していますね。
原作は果たして映画と同じなのかどうか?
原作を読んでみるとより一層作品を楽しめると思います。
映画と原作の違い
原作ではマリウスは・・・
マリウスは不器用で、どこか風変わりな人物として描かれています。母は亡くなり、父とは疎遠で、君主主義の祖父に育てられました。
コゼットが14歳の時に初めて会ったマリウスは、執拗に彼女を追い回したため、ヴァルジャンはマリウスがジャベールのスパイの一人だと確信し、引っ越してしまいます。
原作では現代風に言うとちょっとストーカーのような面が見られます。
アンジョルラスとは政治的な見解が大きく異なり、激しく衝突します。
マリウスと祖父とはコゼットとの結婚の時期に和解したそうですが、ヴィクトル・ユゴ―の人生そのものを投影した、波乱に満ちたキャラクターのようです。
映画ではマリウスは・・・
映画でのマリウスは完全にsweetな男性として描かれています。
マリウスはアンジョルラスの親友として描かれており、政治的な見解の違いはありません。
ヴァルジャンがマリウスに正体を明かし、コゼットの名誉を傷つけないために去ると告げると、マリウスは去ればコゼットの心を傷つけるだろうと抗議します。
他にも、ファンティーヌが工場を解雇されて娼婦となりその後亡くなるまでの期間は、原作では数ヶ月かかっていたのが、劇中では大幅に短縮され数日か数週間とされている、などなど・・・の違いが見つけられるので、小説を読んで違いを見つけるのも面白いですね。
ドラマ「レ・ミゼラブル」
「レ・ミゼラブル」の主なテレビドラマとしては、以下のものがあります。
- 1982年の全4話構成の『レ・ミゼラブル(英語版)』
- 2000年にフランスで製作された『レ・ミゼラブル(フランス語版)』
後者のフランス版の方は、19世紀フランスの街並みを再現し、膨大な衣装やエキストラを投入した規模の大きなドラマ化で、ほぼ原作に忠実なようです。
原作とともに、これは観てみたいものです。
もう一つの映画「レ・ミゼラブル」
フランスで制作され、日本では2020年に公開された、別の「LES MISERABLES」という映画もあります。
移民や低所得者が多く住む危険な犯罪地域で、犯罪防止班に新しく加わることとなった警官のステファンは、仲間と共にパトロールをする。
ある日、イッサという名の少年が引き起こした些細な出来事が大きな騒動へと発展。事件解決へと奮闘するステファンたちだが、事態は取り返しのつかない事態に発展していく・・・。
というような内容ですが、なぜ「レ・ミゼラブル」というタイトルなのか一度視聴してもわからなかったですが、パリ郊外に位置するモンフェルメイユ、というこの街はヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」の舞台になった場所だということがわかりました。
時代が変わって170年以上後のモンフェルメイユは、犯罪多発地帯になってしまっているという事実は、何か複雑な気持ちになります。
このような地域で生まれ育ち生活するということはどんなことか、この映画により考えさせられます。

まとめ
映画、テレビドラマ、小説と、それぞれの「レ・ミゼラブル」について調べたことをまとめました。
作品を深く味わうためには、原作を読むことにまさるものはないと思いますが、映画は2時間程度の短時間で作品の雰囲気を知ることができるというメリットがあると思います。
テレビドラマは観たことないのですが、原作の世界を映像で楽しむことができそうなので、原作を読んだ後に観るとより作品世界に没入できそうです。


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